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【医師監修】NMNとNAD+の違いや老化防止の仕組みをわかりやすく解説

【医師監修】NMNとNAD+の違いや老化防止の仕組みをわかりやすく解説

この記事では、NMNと老化予防の関係をはじめ、期待できる効果や摂取量の目安、NMNが含まれる食品についてご紹介します。

【この記事の監修者】

監修者プロフィール

井林雄太(いばやし・ゆうた)

総合病院勤務。大分大学医学部卒。日本内科学会認定内科医、日本内分泌内科専門医、日本糖尿病内科専門医の資格を保有。現在は医師業務のかたわら、正しい医療情報を伝える啓発活動も市民公開講座など通して積極的に行なっている。

Contents

NMNは、若返りや老化防止を期待できる成分として一躍脚光を浴びた成分です。最近は、NMNを主成分としたサプリメントや化粧品なども多数販売されているため、興味を持っている方も多いでしょう。

このNMNと切り離せないのが「NAD+」と呼ばれる物質です。NMNの老化防止効果を知るためには、NMNとNAD+の関係や違いをきちんと理解しておかなければなりません。

そこで今回は、NMNとNAD+の違いと老化防止の仕組み、さらに、数々の研究で明らかになっているNMNの効果や体内のNMN・NAD+量を増やす方法を解説します。

1.NMNとNAD+の違いとは

NMNの正式名称は「ニコチンアミドモノヌクレオチド」、NAD+の正式名称は「ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド」です。両者は名称がとてもよく似ていますが、その働きは異なります。それぞれの違いや役割を以下で詳しく見ていきましょう。

1-1.NMNとはNAD+に変換される成分のこと

NMNは、あらゆる生物の細胞内に存在する成分です。生体内ではビタミンB3(ナイアシン)から作られますが、年齢とともに生産量は減少していきます。

NMNの体内量が少なくなると老化が始まり、認知機能や身体機能の低下が進む原因の一つと考えられています。

このように、NMNは加齢変化に関係する成分ですが、さらに重要なのはNMNがNAD+の前駆体である点です。

NMNは、エネルギー産生や老化予防と関わりの深いNAD+に変換されます。

NAD+も加齢にともない減少しますが、NAD+そのものを摂取しても分子量が大きすぎるため細胞膜を通過せず体内のNAD+量の増加につながりません。そこで重要な役割を果たすのが、NAD+の前駆体であるNMNです。

NMNはNAD+と異なり体内に吸収されやすく、しかも速やかにNAD+に変換されます。つまり、NMNを摂取することは体内のNAD+量を増やすことに深く関係しているのです。

1-2.NAD+とは生命維持や老化予防に欠かせない成分のこと

NAD+は、ミトコンドリアでエネルギーを作り出す際に欠かせない補酵素です。NAD+がなくなるとエネルギーが作り出せなくなるため、生物は生命を維持できません。

また、NAD+が加齢によって減少するとともに酸素利用率も下がるため、エネルギー不足を招くことになります。

さらに近年、NAD+は老化を司るサーチュイン遺伝子(長寿遺伝子)の活性化にも、関与していることがわかってきました。

ヒトには7種のサーチュイン遺伝子がありますが、NAD+はこれらすべてを活性化するといわれています。

2.NMNとNAD+の老化抑制効果に関する研究

NMNとNAD+による若返り効果・抗老化作用は、数多くの研究で実証されてきました。ここでは、そのなかでも特に興味深いものをいくつか紹介します。

2-1.NMNの摂取によりマウスの抗老化現象が報告された研究

生後5カ月のマウスに1年間NMNを摂取させたところ、17カ月齢(ヒトの60代に相当)になっても代謝機能が維持されて肥満にならず、高い活動性も見られています。

脂肪や筋肉、肝臓では、年齢を重ねるにつれて生じる遺伝子の変化が抑制されるなど、抗老化作用が示されました。

加えて、NMNを摂取したマウスのグループは、摂取していないグループに比べてインスリン感受性が高い傾向にあります。

老化にともない低下しやすい網膜の機能や骨密度が維持され、免疫細胞が維持されるなど、その他の抗老化作用も報告されています。

2-2.NMNの補給で老化したマウスの若返りが報告された論文

生後24カ月の老齢マウス(ヒトでいえば、60~70歳程度)NMNの投与をしたところ、細胞内のNAD+レベルが向上し、認知課題のパフォーマンス向上が示されました。

これは、脳血流量の増加と神経血管機能の回復が見られたことが理由だと考えられています。                    

NMNの適切な補給は老齢マウスの神経血管の若返りを促すため、抗老化作用があるのではないかといわれています。

2-3.NMNを摂取した高齢男性で歩行速度や筋力の改善などが報告された研究

国内の65歳以上の男性を対象とした研究では、被験者に一日250mgのNMNを12週間経口投与したところ、NMN非投与グループと比較して、血液中のNAD+量に2倍以上の増加が見られました。

さらに、NMN投与グループでは歩行速度と握力の改善が見られ、バランス力や足の筋力を調べるテストでも数値の改善が確認されました。

これらの結果から、NMNを継続的に摂取すると高齢者の筋力や運動機能の改善が期待できる可能性があると考えられています。

2-4.NMNの投与で高齢者の身体能力や睡眠の質の向上が報告された研究

国内の65歳以上の男女を対象とした研究では、被験者に一日250mgのNMNを午前、あるいは午後(18時以降)に12週間経口投与したところ、午後にNMNを摂取したグループで下半身の筋力と睡眠の質に改善が見られました。

この結果によって、NMNには高齢者の身体能力の衰えを防ぎ、睡眠の質を高めて疲労を改善する作用が期待できると示唆されています。

3.体内のNMNやNAD+を増加させる方法

NAD+はNMNに比べて分子量が大きく、体内に吸収されにくい側面があります。そのため、体内のNAD+量を増やすには、NMNを体内に取り入れてNAD+に変換するほうが効率的です。

ここからは、老化予防のために体内のNMNやNAD+量を増やす方法、サプリメントなどでNMNを補給する方法を解説します。

3-1.食事や運動でNMNやNAD+を増やす

NAD+の前駆体であるNMNは、枝豆やブロッコリー、牛肉やエビなどさまざまな食品に含まれています。

しかし、食品中のNMN量はごくわずかで、100mgのNMNを得るには枝豆なら約21㎏(約33,000粒)、ブロッコリーなら約40㎏(約2,000房)を摂らなければなりません。

しかも、NMNは熱に弱いため、野菜などは生のまま摂取する必要があります。したがって、食事だけで体内のNMN量を増やすのは難しいでしょう。

また、食事量のコントロールで、体内のNAD+を増やせる可能性が示唆されています。これは、絶食するとエネルギーの産生要求が高まり、結果としてNAD+の生産量が増えるためです。ただし、この方法は下手をすれば健康を損なうおそれがあるため、積極的にはおすすめできません。

その他、運動するとNAMPTと呼ばれるNAD+の合成に必要な酵素が増加して、NAD+が増えることがわかっています。

3-2.点滴やサプリメントでNMNを補給する

食事や運動でNMN・NAD+を増やすのは難しいものですが、おもにサプリメントを利用すればNMNを効率良く補給できます。

点滴は、NMNを取り扱っている医療機関で受けることが可能ですが、(2022年10月時点で確実な臨床試験のエビデンスはないため)医療機関の主治医の説明に納得したうえで受けましょう。点滴は1回でも効果が実感できるとされていますが、健康維持や疲労回復、抗老化作用を望む場合は、月に1~数回程度の施術を推奨しているクリニックが多いようです。

過去の報告からサプリメントを利用する場合は、一日あたりNMNを100~300mg程度摂るのが理想とされています。

なお、マウスの研究ではヒトに置き換えると、体重1㎏あたり8mg程度のNMNを投与されていました。体重60㎏であれば一日480mgのNMNを摂取することになります。サプリメントなので医薬品のようにヒトでの臨床試験は必須ではないものの、国内の臨床実験では摂取量500㎎までなら一般的に問題ありません。また、個人によっては1,000mgまで問題ないケースもあります。とはいえ、メーカーの推奨量を守りつつ摂取しましょう。

4.まとめ

NMN(ニコチンアミドモノヌクレオチド)とNAD+(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)は、名前は似ているものの別の成分です。

NMNはNAD+の前駆体で、NAD+は細胞のエネルギー産生や老化予防において重要な役割を果たしています。

NMNやNAD+の抗老化作用に関する研究は幅広く行なわれ、その対象は動物だけにとどまりません。ヒトでも多くの臨床研究が実施され、その多くがNMN・NAD+の抗老化作用を示唆する結果となっています。

体内のNMNやNAD+量を増やす方法としては、食事からの摂取・絶食・運動などがありますが、どれも効率が良いとはいえません。

必要量のNMNを体内に取り入れ、効率良くNAD+を増やすには、サプリメントや点滴をうまく活用していくとよいかもしれません。

NAD+の体内生産量は、20代を過ぎると減少傾向になります。必要と感じたら早めにNMNのサプリメント摂取も併用してみるのも、健康長寿につながる可能性があります。

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